Wisps

Just Another Journal

2020年6月21日(日)

父が入院している。肝機能不全、身体にたまった水、日常生活活動機能の著しい低下。入院4日ほど経っても、状態に改善はなく、このまま病院を出ることはない可能性もある。実際のところ、年内いっぱいいけるかどうかという予感がする。

夜、田舎の母と弟を電話とメールで連絡を取り、今週末、実家に行くことにした。

長い距離を歩いていると、決まって父のことを思う時間がある。

身の回りのすべてが嫌で、飛び出た田舎。父親は、その象徴でもあった時期があった。オートバイでタンデムをしていた頃の父は幼い自分にとっては、たしかにヒーローであったはずなのだ。ほんの10数年で父親に対する見解は180度変わった。そこから更に3Decades. 今、灯火が消えかかっている父の命に、僕の心の底に浮かぶのは、じわっとした感謝の気持ちだ。ただし、感謝の言葉を素直に伝えるには、彼の耳はどうしようもなく難聴で、彼の脳には、払いきれない霧がかかっている。

やがて着ることになる喪服を買いに行った。

親切なスタッフは、僕の身体に合う上着を一生懸命に探してくれるが、普段の仕事着を選ぶような気持ちで買い物をすることができない。一瞬はおって、即座に決定。裾上げも、スタッフがこれはどうか、という丈で迷わず決める。お腹の底に流れる、涙以前の悲しみは、まるで冷え切った鉄の塊が流体となり、わからないくらいのスピードで、腹の底をまわっているような気持ち。

家族を亡くすのは、初めてじゃないだろ、という声も聞こえる。